アールト大学 IDBM留学日記

デザイン × ビジネス × テクノロジー

フィンランド発・疑似肉で地球を救う!Gold&Greenへ訪問

IDBMの2つめの授業 Corporate Entrepreneurshipの2週目が終わろうとしています。

昨日はこの授業の一環で、麦を使った疑似肉(Pulled Oatsと言ってました)を製造する会社「Gold&Green」に訪問し、事業の内容やビジョンが心に残ったのでそのメモです。 

IDBM

疑似肉自体はそれほど新しくもなく、今までに大豆を使った物など色々ありますが、こちらの会社が製造しているのは素材が「麦」ということで注目を浴びています。

Gold&Green について

  • 2015年に創業
  • 創業者のマイヤはデザイナーでアールト大学のIDBM出身
  • 創業者がベジタリアンで肉の代替選択肢が少ないことに疑問をもち、スタート
  • 創業から3年で現在は50名ほどの社員に成長
  • 食料品大手のPauligから出資を受け、会社を51%保有
  • 製品は動物を使わない、保存料を使わない

↓画像は「Nyhtökaura」という製品。Gold&Greenのプレスキットより

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会社説明の担当の方の話

  • Sustainable Food (持続可能な食料品)というのは食料品そのものやパッケージの話だけではなく、ライフサイクルそのもののことを指す
  • 一番最初の製品出荷時はパレット1枚分の量しか製造できなかった
  • 出荷/販売と同時にフィンランド国内で大きなブームが起こった
  • 大豆を使った疑似肉は麦を使ったそれほど環境に良くはない
  • 大豆アレルギーの人もいるので麦のオプションを
  • 寒い北欧でも育つNordic Oatsを使用
  • 肉産業は政府からの助成金が出るが、疑似肉の企業には出ない
  • プロテインビジネスは国内でメガトレンド
  • 環境に優しい(動物を使わない)意識が高まっている
  • Gold&Greenは今までにないカテゴリーと市場を新たに創造することによって業界リーダーになれた

Gold&Greenが大切にしている4つのルール 

  1. Taste(味)いくら環境に優しいとはいっても味が悪ければ消費者は買ってくれない。味の良さには相当R&Dの力をいれている。 
  2. Usage(人との交わり)食料品と人が接触する"インターフェイス" - 既に人間になじみのあるものに仕立てる。
  3. Nutrition(栄養)麦という素材なので栄養価は高い。驚くべきことに肉と同等のタンパク質を引き出すことが可能。
  4. Access(アクセス)消費者が買いやすくするためにスーパーの「肉」と同じコーナーに陳列。

疑似肉で地球を救う

エントランスを入った奥の壁にも書かれているように「For us it matters」(私たちには関係ある)をいうビジョンをすごく重要視しているそうです。動物を使わないこと、ちゃんと栄養をとれて美味しい食料品を提供できること、で本当に地球を救うことに関心があることも担当者から聞けました。

↓画像は創業者とビジョンの壁。Gold&Greenのプレスキットより

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いきなりお題!国外へマーケティングせよ

ただの企業訪問で終わらないところがIDBMっぽいです。「せっかく国際色豊かな皆さんがいるのですから、この疑似肉パティー(ハンバーグみたいなもの)を貴方達の国でのマーケティング案を考えてください。5名で1チームを作って、さあどうぞ!」

担当の方からそんなアナウンスがあり、課題タイムに突入。近くにいた5名でチーム結成。「どこの国にマーケティングしよう?あ、君日本人だね。じゃあ日本にしよう!」ということで日本へどう持ち込むかブレスト開始。制限時間いっぱいの30分で仕上げました。 

出来上がって発表した内容は:

  • 日本ではそんなにビーガン指向や食の環境意識は高くない(けど伸びてるかも)
  • 日本人は味に繊細なので、美味しければまあいけるんじゃない?
  • 「Mugi-burg」という製品名(人々が具体的にイメージし易いように)
  • 日本はフィンランド文化が好き(ムーミンマリメッコ)なので、それをフロントにもってくれば注目されるかも

マーケ担当の方もその場の発表に聞く側として参加。「ムーミン肉 (Moomin-meat)にしよう、という社内ジョークもあるわ」とのフィードバックに一同騒然。

ムーミン肉...!

まとめ

  • Gold&Greenの事業、製品、ビジョンがとても良く分かり、素敵だった
  • これからの食の素材への関心の高さは世界を救うヒント
  • サステナビリティ」や「地球を救う」のようなキーワードに触れる機会が多いこの頃を再認識した 

現地の友人の話によると実際、Gold&Greenの疑似肉は売り切れが続出するほどポピュラーらしいです。次にスーパー立ち寄った際はこの製品や疑似肉を使った地球に優しい肉に注意して買い物をしたいところです。

IDBM Challenge 2018

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IDBM Challengeは、我々IDBM生がINTROの後に取る正式な最初のコースです。先週、3週間に渡るIDBM Challengeが無事終わりました。

IDBM Challenge の概要

今年はこのIDBM Challengeというコースが設けられてから3年目になります。常に改善しながらプログラム内容を書き換えるらしいので、1年目とはだいぶ違った内容だそうです。

 

今年はNordic Rebelsという、北欧エリアの高等教育を推し進める活動組織(フィンランドデンマーク)の一貫として実施されました。この組織も、この授業自体もMiikka J. Lehtonen氏がディレクションしています。Miikka氏は東大のi.schoolでも教えた経験があるそうです。

さて、次世代の教育をビジョンに掲げるNordic Rebelsですが、IDBM Challengeで組み込んだ教育理念の面白い所は、「多様性を主軸としたチームを組み、Wicked Problems(=困難な課題)に挑むプロジェクト型コース」である、ということです。

特徴としては、学習内容が学生によってバラバラで構わない、というところにもあります。年齢も専門性も国籍もバラバラな人たちが集まって、学びのアウトプットが一緒のはずがないという考えです。30代のデザイナーの僕と、20代のビジネス専攻の学生とでラーニングが違って当たり前。多様なバックグラウンドの人達が集まるのだから、このコースで何をラーニングするかも、各自決めるところから始まりました。

IDBM Challengeは全部で3週間ですが、個人での課題をこなすタスクもあり、チームワークの時間(ほとんどこれ)もあり、ゲストレクチャーの時間も沢山ありました。以前書いたCooking Slamもその一貫です。学びの切り口は様々ですが、一貫して「Ideation(考える)→ Validation(検証する) → Execution(実行する)」というプロセスを学ぶフレームに沿っていました。

チャレンジ : Sustainable Development Goals 

今年のチャレンジのテーマは、「持続可能な開発」。国連にはSustainable Development Goals (持続可能な開発目標)という目標があり、貧困、平和、男女平等、地球温暖化、エネルギー、など、17個のカテゴリーを2030年までに全て達成するという具体的な期限も設けられています。それをヘルシンキコペンハーゲンのコンテクストにおいて考えようというお題です(IDBM Challengeではコペンハーゲンにもクラスをとっている学校があります)。そして3週間の最後には調べたことを発表するプレゼンイベント(ペチャクチャナイト)を開催しよう!というシメのお題もありました。

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画像:United Nations Department of Public Information

チーム編成と課題

チームの結成はそれぞれのメンバーの分野(biz, tech, design)を考慮した上で振り分けられました。僕のチームは5名で、フィンランド人、韓国人、ドイツ人、日本人(自分)という構成。そして「NO POVERTY」(貧困をなくそう)のお題を割り当てられました。 

ヘルシンキにおける貧困、の定義

実はこれはものすごく難しい問題だと感じました。世界で比較したらフィンランド社会保障制度が進んでいます。アメリカの様に貧富の差がものすごく広くありません。ヘルシンキのような都会では見方によっては貧困は存在しないという意見もあります。「その日の食料にも困っている人」が街中にそんなにいない、というようなことです(本当に少ないです)。一方で、Bread Queueという低所得者のための食事の無料配布も行われており、列ができるほど並ぶ場合もあるという事実もあります。

悩みに悩んだ結果、僕のチームはヘルシンキにおける貧困とは何か」の定義から始めました。そして書物、オンライン調査、フィールドリサーチ(長期失業者をトレーニングする施設 UUSIX への訪問)を実施。

写真はUUSIXの内部。ミシンの使い方をトレーニングする部屋。

UUSIX

調査した結果をまとめ、貧困とは「長期失業による機会損失、及びそれによって被る物理的・精神的悪循環」ということに到達しました。以下は調査の過程でわかった事実です:

  • 「長期失業」の定義は2年間仕事がなかった人のこと
  • 2018年6月の時点でヘルシンキエリアの長期失業者は22,000人
  • 失業手当はかなり細かく設定されている
  • フィンランドでは文化的に、失業することに対してのスティグマ(恥辱)がある
  • 一度長期失業にハマると抜け出すのが難しくなる 

ヘルシンキの長期失業(による貧困)を解決するソリューション

課題が定義され、それの解決策を模索しました。またまたフィールドリサーチを行い、失業者をケアする組織 HeTy Association や 難民とスタートアップを繋げる会社 The Shortcut へ訪問しました。似た様な課題に挑戦する組織へのインタビューを通じて、解決策のアイデアを模索できると考えたからです。

写真はHeTy Associationの食堂の様子。

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訪問後、考えをまとめた僕等は、失業者と企業が交流できるカフェ「Coffee Instead of Ties」を創設するという解決策を考案しました。

以下はこのカフェの概要です:

  • 物理的エンゲージメントは仕事を探すハードルを下げる
  • ↑ 暖かいコーヒーを飲みながら気軽に交流できる環境ならさらに良い
  • コーヒーという暖かい飲み物は心身の安らぎを高め、物理的交流を促す(フィンランドはコーヒー消費量世界1)
  • 失業に対するスティグマ(恥辱)をできる限り除く
  • 政府の支援プログラムを利用してこのカフェのファンディングをする
  • 企業側は一人採用する毎に金銭的な支援を受けられる

本当にこんな場を必要としている人がいるのか?という問いを検証するためにも、失業者のケアをする施設の人にも念入りに聞いてみました。「とても良い切り口だ。いつオープンするのか」などのコメントもいただけました。実際には仮想のソリューションなので残念ながらカフェをオープンするまでにはいたってないことを伝えました。もしかしたらその組織内において検討できるかもとのこと。

最終イベント - Pechakucha Nightを自分達で開催する

最終イベントはPechakucha  Night(プレゼンイベント)を開催するというものでした。Pechakucha Nightというのは、20枚のスライドをそれぞれ20秒ずつ(6分40秒)で説明するプレゼンテーションイベントです。ロケーション(Maria 01という古い病院跡を利用したスタートアップランド)だけは確保されていたものの、会場設営や客の招待、ドリンクや食べ物の提供など、全部自分達でやりました。プレゼン準備+イベント準備の同時進行で多忙な毎日でした。

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上の写真はイベント開場後すぐの様子ですが、最終的には満席になるくらいのお客さんに来場いただけました。そしてどのチームも完成されたプレゼンテーションを披露。IDBM Challengeは13チームあり、全てのチームがそれぞれ与えられた課題に対する解決策を発表しました。

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直前のリハで僕等のチームのプレゼンの仕立てと流れがイマイチだったいうことに気づき、本番直前まで見直しと練習を行っておりました。最後にはなんとか無事にまとまり、ストーリーのあるプレゼンとして発表できたと思います。

まとめ

  • IDBM Challengeの3週間は密度が濃く、個人的には本当に面白かった
  • 良いチームメンバーに恵まれ、一致団結できた
  • しかも全員結構納得のいく形で物事を進めることができた
  • かなり真剣に取り組んだのでチャレンジングだったが学びも多かった
  • 教授からの丸投げ感がすごい
  • コースの構造上、タスクやデイリーの課題に対して「何故これをやっているのか」を常に自分の中で意識していないとブレる
  • イベント終了後のチームの、そして皆の結束の強さがすごい

明日からの3週間は新しい授業 Corporate Entrepreneurship and Design が始まります。ヘルシンキはもう冬の寒さで「あー風邪ひくなー」と思ってたら予想通り見事に風邪をひきましたが、また気を引き締めてがんばりたいと思います。

Effectuation Theory を料理で学ぶ

Aalto University IDBMプログラムが本格的に始まって3日が経ちました。僕等の一つ目の授業はIDBM Challengeという3週間のインテンシブプログラムなのですが、3日目の今日はEffectuation Theoryという戦略の思考法を料理(IDBMでは"Cooking Slam"と呼んでた)で学ぶ体験で、それが面白かったので記録しておきたいと思います(IDBM Challengeそのものに関しては別記事にまとめたいと思います)。

Effectuation Theory とは

提唱者であるバージニア大学経営大学院のSaras Sarasvathy氏によるとこの考え方は「今あるリソースでなんとかする」ということだそうです。戦略の思考法には2つのタイプがあり、①Managerial Approachと②Entrepreneurial Approachの2つ。

①のManagerialはまず予算、投資対効果、競合分析等を精緻に分析し、目標を設定してそれに向かって進める大企業型のアプローチ。それに対し②のEntrepreneurialは予算もなく、未知の領域を開拓するのであまり目標がハッキリしない起業家型のアプローチ。この起業家型のアプローチをEffectuation Theoryと呼びます。

IDBMの講師の方がわかりやすく説明してくれました:

  • Managerial Approachは「手法と材料がきっちり書かれたレシピで料理することよ」
  • Entrepreneurial Approachは「冷蔵庫に入っているものを使って料理することよ」

なるほど。 

Effectuation Theory を料理で学ぶ?

というわけでこのEffectuation Theoryを身を以て学ぶため、我々IDBM生はヘルシンキにある貸しキッチン/イベントスペースのFlavour Studioに集結しました。待ち受けていたのは、いくつかのテーブルに置かれた食材。それも限られたもののみ。

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お題は、「テーブルの上に乗っかっている食材のみで食事を作る」というもの。料理のバラエティ番組のようです。

各テーブル毎に作る食事の種類が違い、僕が参加したテーブルは「前菜」の担当でした。置かれていた食材は:長ネギ、リンゴ、玉ねぎ、チーズ、バター、ザクロ、等。

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エキストラテーブルに色々他の食材もあり、そちらも使ってよいとのことで、ピーマンとプリングルスもゲット。テーブルの上に置かれた食材は全て使わなければいけない制約があり、味が複雑になりすぎないように配慮が必要でした。

Effectuation Theoryに基づいて作戦会議

幸いにもチーム内に料理に詳しい女性メンバーが数人いたので、テーブル上の食材を使ってどういった料理が作れるか、サクサク議論が始まりました。玉ねぎと長ネギをバターで炒め、それを半切りピーマンの上に乗せ、ザクロの実で飾るといった構想ができあがりました。与えられた時間は1時間ほどのみ。モタモタしていられません。すぐに全員で作業にとりかかりました。

料理のピボット 

ところが作り始めてすぐに運営から「あー、ごめん。ちなみに全員分(約50名分)の量を作らないといけないよ!」とのツッコミがあり「半分に切ったピーマンの中に具をいれる」といった当初のアイデアは圧倒的に数が足りなくなることに気づき、いきなりピボット(方向転換)を実施。人数分が十分に確保できそうなプリングルスに乗せることにしました。

完成

「作りながら検証する」という素晴らしくアジャイルな手法で料理が進み、完成した僕等の前菜はこちら:

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 味も悪くありませんでした。 緑色のものはリンゴの摩り下ろしに青色着色料を混ぜたもの。テーブル上の食材を全て使うため、2種類のバリエーションを作って乗り切りました。 

他のチームは「メイン」や「デザート」などのお題があり、それぞれちゃんと制限時間内に50人分の料理を準備できていたことが何よりの驚きでした。全部のチームの料理を試食することもでき、どれも美味しかったです。

  • その場にあるリソースのみを使う→工夫する
  • 限られた時間内に行う
  • やりながら考え、うまくいきそうになかったらすぐにピボットする
  • チームワーク最優先で結束して遂行する

以上のことが全て行え、Effectuation Theory を体感できるCooking Slamだったと思います。

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まとめ

Effectuation Theoryをチーム料理で体験できたのはとても有意義であり何よりも「fun」でありました。

Managerial か Entrepreneurial、どちらのアプローチが良いかというものではなく、時と場合によって手法が異なります。

Managerialアプローチの目標設定がなければ測定が不可能ですし、Entrepreneurialアプローチのアジャイルさがなければテストのスピードや予想していなかった「ひらめき」との出会いも少なくなりそうです。

両方の考え方をバランス良く取り入れて物事を進めることが大事なのだと学べた1日でした。

デザイン留学受験って何が必要なの?

IDBM

3日前にヘルシンキに到着しました。ヘルシンキはいい天気です。日中は30度いかず、日陰に入れば涼しい感じ。最初の2泊は市内のアパート型ホテルに泊り、昨日、寮タイプの学生向けアパートに引っ越しました。フィンランドでの学生生活も別途記事で更新していきたいと思います。

今日は僕が受験したプロセスについてご紹介いたします。僕が受験したのは大学院(Master's)のプログラムです。例の「ビジネスとデザインが」を軸に探した学校で、アメリカ4校、イギリス1校、フィンランド1校、にそれぞれ応募しました。全て必要なものは共通、でもないのですが、デザイン留学に必要なものは大体の場合、以下になります: 

受験準備編

  • GMATやGREのスコア:いわゆる統一試験です。アメリカの大学院は要求してきましたが、アールト大学は要求されませんでした。僕はGMATを3回受けました。GMAT, GREともに数学と英語の試験になります。
  • ポートフォリオいわゆる作品集です。デザイナーであれば今までにやってきたものがあると思いますので、作ること自体は容易いと思います。大事なポイントは思考プロセスやスキルが伝わること。僕の場合は特別に力をいれていた(そして長く携わっていた)プロジェクトを1つ入念に説明し、割と短期のプロジェクトなどを10個ほど記載しました。思考プロセスとスキル、ビジネスインパクトや社会への貢献等がバランス良く伝わるように気をつけました。
  • TOEFLのスコア:英語が第一ヶ国語の大学を出ていれば免除になるケースもあります。
  • エッセイ:学校によって出題テーマが変わってきますが、「将来どうなりたいのか」、「その将来の目的にこのプログラムはどう役に立つのか」、「何故この学校なのか」のような軸はどこも聞いてくると思います。なんとなく進学して勉強したい、だと説得力がないので、深い自己分析が必要になります。僕も掘り下げて掘り下げて、本当に自分がしたいことはなんなのか、本当に留学がそれを助けるのか、考える良い機会になりました。
  • 推薦状:大体2~3通必要になります。職場の上司や、ファミリービジネスに関わっている場合はクライアントに書いてもらいます。僕も上司やお客様にお願いし、書いていただきました。
  • 受験費用:学校によって違いますが$100~$300くらいです。応募する学校の数が多いと応募するだけで結構な額になります。
  • 応募書類:最近は全てオンラインで済むので便利!途中でもセーブしながら進められます。
  • 成績表:公式な大学の成績表。大学から直接送ってもらう形式がほとんどです。
  • 卒業証書:少ないと思いますが、一部要求してきます。僕の場合、アールト大学でこれに一瞬ハマりました。引っかかった経緯: 応募書類の1つに卒業証書のコピーが必要とのことだったので、 実家においてあったものをコンビニでコピーして送ったらダメと言われる →「行政書士による"認証"をうけてないとだめ」とのことでした。慌てて日本の行政書士事務所に相談するも「海外の大学の証明はできない」 とのこと。この時点で応募の締め切り間近。他の書類や準備は全て揃ってるのに、ここで終わりか!と思ったのですが、ダメ元でボストン大学(僕が卒業した大学)に直にお願いしてみたところ「実物を再発行してフィンランドに直に輸送」 とう形で$150くらいでやってもらいました(高い...)。2週間ほどかかるとのことで、これも応募の締め切りを過ぎてるスケジュールですが、とにかくやってもらいました。そしたらなんと、その卒業証書がアールト大学に到着する前に「書類は全て受領したので選考に入ります」とのメールがきました。先に提出してあった成績表に卒業した事実が明記されていたので通ったのでしょうか。謎ですが、良かったです。

実践編

  • 面接:必要な書類などを期限までに学校に送付したら、あとは面接に呼ばれるのを待ちます。この段階ではもう何もできないので、静かに待ってるのみです。面接は実際にキャンパスに行ってin-personでもできるのがほとんどだと思いますが、僕はskypeと電話で行いました。日本に住んでいることなどを考慮してくれます。
  • アールト大学IDBMの面接:skypeで行いました。スクリーンの向こうにはプログラムのディレクター1名と、教授と思われる方2名の、合計3名いました。履歴書やこれまでの自分のキャリアの経緯を説明し、そのあとは教授からの質問攻め。当然ながら「なんでアールト大学IDBMに入りたいのか」や「デザイナーとしての強みは何か」などを聞かれました。面接準備はかなり入念にやっていたので、スムーズに行うことができました。最後にこちらからの質疑応答がありますが、オンラインに載っているものを聞いてはいけません。たくさんリサーチして得た情報をベースとして踏み込んだ鋭い質問をするように気をつけました(人生どんな場面においてもそうですね)。
  • 面接後:面接をパスしたら、合格通知が届きます。このタイミングで、奨学金の有無とオファーの額が提示されます。アールト大学の結果発表より前に合格通知をもらっていた学校にはお断りの申し入れをし、正式にアールト大学に決めました。

留学受験に関しては大体以上かなという感じです。フィンランドの学生ビザ取得に関してもまとまりそうでしたら書いてみたいと思います(アメリカよりだいぶ簡単です)。

アールト大学International Design Business Managementとはなんなのか

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*当記事は筆者が実際にアールト大学IDBMに留学してから更新しました

IDBMとはどういうプログラムなのか 

今回はアールト大学International Design Business Management (以下IDBM)とは、について書いてみたいと思います。まだプログラムが始まってないので実体験できているわけではありませんが、情報収集時/面接時に知ることができたことベースでシェアしていきたいと思います。 

1文にまとめると、IDBMは「デザイン×テクノロジー×ビジネスの3分野を融合させ、異分野理解を深めたT型人材を育てる修士課程」のプログラムです。

 当プログラムの詳細を紹介するページにはこのように書いてあります:

IDBM educates students with arts, business, science and engineering backgrounds as T-shaped professionals providing them with a strategic view into creative leadership and management of international design-centric businesses, operations, and product and service development. The objective is to gain knowledge in multiple disciplines and to learn to connect one’s own disciplinary expertise to a wider multi-disciplinary, inter-disciplinary and trans-disciplinary design business framework. The global approach of IDBM programme prepares students to work in multi-cultural settings and collaborate across national and cultural boundaries. Graduates of the IDBM programme will be able to manage and lead initiatives and other individuals in order to undertake new business ventures within global environments.

日本語に訳すと以下のような感じ:

IDBMは、デザイン、ビジネス、エンジニアリングの背景を持つ学生をT字型のプロフェッショナルとして育て、ビジネスやオペレーション、製品やサービス開発といった現場において創造的なリーダーシップと戦略的な視点を発揮できるよう、教育の機会を提供します。このプログラムの目的は、異なる分野で知識を習得して自らの専門領域をより幅広いフレームワークに結びつけることです。IDBMが重要視するグローバルなアプローチは、国や文化の境界を越えて協力できるよう学生を訓練します。卒業生は、多文化環境の中で様々な新しいビジネスベンチャーに挑むために組織やチームを導くことができる、いわゆる「T型人材」として世界で活躍することができるでしょう。

IDBMの歴史

*情報はIDBM設立初期の資料やIDBM運営チームとのディスカッションより

International Design Business Management(IDBM)は1995年、ヘルシンキ経済・経営大学(Helsinki School of Economics and Business Administration)、ヘルシンキ芸術・デザイン大学(University of Arts and Design Helsinki)、およびヘルシンキ工科大学(Helsinki University of Technology)の3つの大学間で試験的にスタートを切りました。これは後に上記3つの大学が合併して「アールト大学」として生まれ変わる以前、故Reijo Luostarinen教授によって設立されました。フィンランド教育省によってサポートされたこのコラボレーションは、フィンランドの産業の未来を担う成功要因になると考えられたのです。

当時はそれぞれの大学より10名の学生(合計30名)を集めて始まったこの実験は、企業が常に必要としていた「T型人材」を体系的に育成することに対する答えでした。この実験は修士課程の副専攻(Minorと言われます)として提供され、個人の専門を超えたチームワークを教育理念としたプログラムになりました。

そして時間の経過とともにIDBMのカリキュラムは進化し、社会の動向や業界のニーズに合わせてプログラムの関連性も進化していきました。参加した学生だけでなく業界パートナーからも高く評価されるようになり、IDBMは単なる副専攻以上のものになる必要性が認識されました。

そして2010年、IDBMは修士号の専攻プログラム(Majorとして)として正式に認定されました。これは、科学、デザイン、ビジネスを融合した新しい革新的な大学を設立するための「フィンランド大学改革」の優先プロジェクトとして、アールト大学の設立(UIAH、HSE、HUTの3つの大学の合併による)と並行して行われました。この形成により、IDBMはアールト大学で提供される修士課程の中で学校間を横断して組まれる最初の大学院プログラムとなったのです。

IDBM卒業時に取得できる学位

自分の分野によって取得する学位がそれぞれ違います。ビジネス分野およびエンジニアリング分野はMaster of Science (MS)、デザイン分野はMaster of Arts (MA)になります。僕は後者のMAになります。

IDBMの期間

2年間になります。 

IDBMの学院生構成

このプログラムではデザイン、ビジネス、エンジニアリング、それぞれの分野から12人ずつが参加し、合計で36人で構成されます。授業ではビジネスのクラスもあり、工学のクラスもあり、デザインのクラスもあり、です。異なるバックグラウンドを持つチームメイトでグループを作ることでお互いの強みを発揮し合い、お互いから学ぶ、ということができます(単に講義を聴くだけなら単独でもオンラインでもできる、という思想)。学院生の半分はフィンランド人、もう半分は僕の様な海外からの留学生、と聞いています。

IDBMの授業構成

1年目はrequired (cumpulsory?という単語を使っている)の授業がずらり。2年目からはthesisとelectiveで構成されるので個人における自由度が高いそう。 

Industry Projectという6ヶ月のリアルプロジェクト

IDBMの1年目にはIndustry Projectという、産学連携の6ヶ月間に渡る、リアルプロジェクトがあります。それぞれの分野から2名ずつほどが集まってチームを結成し、IDBMと連携している企業または自治体と一緒にプロジェクトに携わります。実に様々な組織とコラボしているらしく、ヘルシンキ市などの自治体、UNICEFなどの非営利組織、AIRBUSなどの公開企業、などなど。どのプロジェクトもチャレンジングながら楽しそうです。プロジェクトの紹介ページにはティーザーのビデオが掲載されていますが、機密度が高いプロジェクトもあるようで、最終結果が知れないものもあります。

Admission (応募/受験について)

別途記事に書こうと思います。 

アールト大学International Design Business Managementへの留学

IDBM

「おめでとうございます。あなたはアールト大学IDBMの修士課程に合格されました。」

アールト大学IDBMからこんな通知をもらったのは2018年の4月。本格的に大学院留学を決めてから2年ほどのことでした。

僕は2018年の8月より、フィンランドヘルシンキ市にあるアールト大学(Aalto University)のInternational Design Business Management という修士課程プログラムに留学します。

このブログは、UI/UXデザイナーである僕が留学しようと思ったきっかけや受験の準備からプロセス、留学先決定、そして実際に留学先での体験等(←こちらは現地よりリアルタイムで行いたいと思う)にいたるまでを、綴ってみようと思います。書く内容は全て主観ですし、備忘録としての適当なアウトプットですが、少しでもデザインや留学に興味がある方のご参考になれば幸いです。

アールト大学IDBMとは

アールト大学のIDBM (Aalto University International Design Business Management) はテクノロジー、ビジネス、そしてデザインの三つの領域を融合させ、イノベーティブな価値創造プロセスを学習することを目的としたプログラムです。*プログラム自体の内容については別記事で書きます。

留学のきっかけ

そもそも、留学しようと思ったきっかけは、今から2年ほど前になります。僕が勤めていた会社はシステムインテグレーションをメインの事業とする会社でした。早い段階からスマホアプリの受託開発も並行してはじめ、開発だけでなくUI/UXデザインにも力をいれていており、運良くそんな時期に拾ってもらった僕は数々のクライアントのスマホアプリ案件にUIデザイナーとして関わることができました。入社3年目くらいで自社のクラウドサービスにフォーカスすることになり、僕の役割もそのサービスのUI/UXデザインの担当に変わりました。

自社サービスを提供するにあたり、受託案件と決定的に違うのが「売れなければいけない」ということ。受託案件では我々の目標は最終的には「納品」することです。納品さえしてしまえば、そのアプリが売れようが売れまいがあまり関係はありません(もちろんヒットしてお客さんもユーザーも満足ならこの上なし)。それまではデザインオンリーで過ごしてきた自分にとって、「売れること」を意識してデザインをするということはとてもチャレンジングなことでした。ビジネスサイドのことを学ぶためにも、製品のUI/UXだけでなくマーケティング活動にも参加させていただきました。

そんな中、大きく感じていたのが「ビジネス知識の不足」でした。デザインとテックのバックグラウンドを補えるビジネス知識をつけることができれば、プロダクトをもっと良いものに、そして組織をもっとうまくリードできるのではないだろうかと考えるようになりました。そこで「Design, Business」というようなキーワードでGoogle検索し、そのような趣旨の教育プログラムがないか、片っ端から探していきました。いくつもの海外の大学院プログラムがありました。(*受験プロセスについても別記事で書きます)

アールト大学IDBMに決定

受験プロセスを経て最終的にアールト大学IDBMに決めたのは以下の要素です。

  1. プログラム内容(デザイン、ビジネス、テクノロジーにおける領域横断的人材育成)
  2. 住んだことのない国(北欧フィンランド
  3. IT産業やスタートアップカルチャーがある(SLUSHもここ発祥)
  4. オファー内容(運良く学費免除)

とくに「住んだことのない国」は自分の中では強い要素でした。違う言語、違う文化での生活は自分のコンフォートゾーンを飛び出し、大きな自己成長が見込めると思いました。

また、ヘルシンキは海を隔てたその南部にすぐにエストニアのタリンがあります。Skype発祥の地として有名ですが、そのエストニアもスタートアップカルチャーに沸く元気な国。2年間を過ごすのに、インプットできるものはたくさんありそうです。ヨーロッパに住んでいれば他の欧州の国への旅も容易いはず。アールト大学への留学を決めました。

というわけで、はてなブログの利用も初で手探りの状態ですが、少しでも参考になるものがあれば幸いです。

 

現地での細かな様子等、Twitterでも更新しております:

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