アールト大学 IDBM留学日記

デザイン × ビジネス × テクノロジー

ATTRACT-EUに参加 / ロッテルダムへの研修

 

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今年はEUのプロジェクトである「ATTRACT-EU」に参加しています。こちらはIDBMのカリキュラムとは全く関係のないプロジェクトなのですが、去年Industry Projectで一緒だったチームメートが誘ってくれ、ありがたく参加させてもらっています。チームは毎度お馴染みのtransdisciplinaryでビジネス学生2人、エンジニア2人、そして僕を含むデザイナー2人で構成されています。お互い知っている者同士で組んでいるため、何かと物事が進みやすいです。

ATTRACT-EUとは何なのか

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欧州連合が主催しているプロジェクトです。ATTRACT-EUのホームページには以下のように書いてあります:

ヨーロッパのGoogleAmazonがないのは何故でしょうか?スウェーデンSpotifyなど、ヨーロッパで人気の新興企業がシリコンバレーに移転したのは何故でしょうか?それは素晴らしい技術や画期的な科学の不足のためではありません。有望なベンチャーがグローバル市場に拡大するメカニズムが機能していないからです。

人々の生活に影響を与えるイノベーションにつながる多くのテクノロジーは、基礎的な研究から生まれています。 ATTRACTは、ヨーロッパの基礎研究と産業コミュニティを結び付け、次世代のDetection / Imaging Technologyをリードする先駆的なイニシアチブです。

目的は、人々の雇用と繁栄のエンジンとなりうる、まったく新しいヨーロッパのオープンイノベーションモデルを作成することです。

欧州連合のHorizo​​n 2020プログラムによって資金提供されたこのプロジェクトは、製品、サービス、企業、雇用を創出することにより、欧州経済の改革と人々の生活の改善を支援することを目的としています。

(About ATTRACTより翻訳/要約)

 

まとめると、新しい技術を持った様々なスタートアップをファイナンスし、研究機関や学校なども巻き込んでヨーロッパにおけるエコシステムを盛り上げようというのが趣旨です。

 

アールト大学と何の関係があるのか

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アールト大学はコンソーシアムパートナー組織の一つに認定されています。アールト大学の施設の一つであるDesign Factoryを通し、学生チームにプロジェクト参加を促しています。学生に公開されているわけではなく、Design Factoryのスタッフが個人的に知っている学生を見つけて話をふっかけている印象でした。

アールト大学は人間中心に捉えることがとても得意なので、技術よりのスタートアップとのタッグはとても相性が良い組み合わせだと思います。

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概念図。多分こんな感じです

Skyechoという企業とのプロジェクト

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僕らが参加している企業はSkyechoというオランダのスタートアップです。Skyechoは高解像度の雨レーダーを開発し、都市へ応用しています(実際のレーダーがロッテルダムで動いています)。世界中の気象予報機関が使っているレーダーのおよそ100倍近い精度で、且つ半径5kmの範囲において、現在〜2時間後の正確な予測が可能なようです。この雨の情報を使って都市の気候に対する弾力性を高める、というのが我々へのチャレンジです。どういうユースケースがあるか?どういうビジネスモデルを生めそうか?都市エリアに住む人々に対して気候の意識を高められるか?などがこのプロジェクトでの我々のミッションです。

 

で、なぜ僕がこのSkyechoとのプロジェクトに参加したのか

個人的に今年の夏に台風や大雨が日本列島を数多く襲ったのは記憶に新しいです。これはなにも今年に限ったことではなく、毎年見ている気がします(正確に計ったわけではありませんが感覚値として)。

 そしてタイムリーなことに9月にGoldman Sachsが「気候変動に対する都市の弾力性」(TAKING THE HEAT : Making cities resilient to climate change)という34ページのレポートを発表しています。内容は以下の通り:

  • 気候変動の規模やタイミングは不明瞭であるものの、そのリスクは大きい
  • より高い気温、より頻繁で強い嵐、農業への影響、食料と水の不足などは脅威
  • その中でも世界のGDPの8割、人口の5割を担う都市への影響は大きい
  • これからのフォーカスは気候変動の抑制ではなく、適応(=adaptation)になる
  • 都市が気候変動に適応する資金を捻出するために革新的なファイナンシング方法が必要になる
  • 限られたリソースの配分において公平性の問題が出てくる(多分フェアではなくなる

あまりハッピーな論文ではないですが読む価値があると思います。ちなみに上記レポートではニューヨークも東京も海面上昇、及び嵐による高潮によって洪水・浸水するリスクが記載されています。近年の台風や大雨の影響を見ている限り、なるほどと思える情報です。 

これからの地球環境と2040年の未来の地球を予測すると、気候変動への対応というテーマは大変興味深いと思いました。ATTRACT-EU、そしてSkyechoとのプロジェクトを通して、気候変動への対応にもっと詳しくことは自身にとって大きな価値になると考えました。都市やビジネスへのマクロ的影響だけではなく、個人のサバイバルのミクロ的問題として捉えることもできると感じます。

 

ロッテルダムへの研修旅行

さて10月の中旬、僕らのチームはSkyechoとワークショップを行うためロッテルダムに旅立ちました。この旅の費用も全てEUの予算から出ています。授業にプロジェクトに、色々な所に行かせてもらえてありがたいです🙏

ロッテルダムではSkyechoの創業チームと直接会って話を聞き、そして一緒にワークショップを開催しました。短時間でたくさんのアイデアを出しプロトタイプまで作って検証してみる、というRapid Prototype Sessionです。プロトタイプに必要な小さな電気道具などを持って行き、最終的に一つ動くものが作れました。創業者が我々の出したアイデアをかなり気に入ってくれ、早速ロッテルダム市のステークホルダーにも話に行ったそうです(早い。。)。

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ロッテルダム到着

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Skyechoが入居するコワーキングスペースCIC

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200を超えるスタートアップが8,000平米のスペースに入居

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とても広くお洒落なワーキングスペース

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Skyechoと共にワークショップする我々

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1つのアイデアのプロトタイプを制作中

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真剣です

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Arduinoと段ボール、針金、モーターを使ってプロタイプが完成!(実際のブツはここで公開できないことをご容赦くださいm(__)m)

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夕方はVenture Cafeというイベントに突入して我々のアイデアを紹介

 

アムステルダムも観光

ロッテルダムで2日間の研修の後は3日ほどみんなでアムステルダムに泊まりました。こちらは完全に観光目的です。

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RIJKS美術館。期待してた「I AMSTERDAM」のサインは撤去されてました。観光客がクレイジーすぎたことが原因のようです。残念。。

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ハイネケン・エクスペリエンス博物館も見物しました。

AR技術や面白いアトラクションをとてもうまく活用した興味深い博物館です。入る価値あります。

アムステルダムではかなり自由に観光でき、秋を楽しみました。インテンシブな1週間でしたがとても内容が濃く、さらには面白いワークショップを行えたのは幸運でした。当プロジェクトは今年度の1年(来年の5月まで)続くので、これからも定期的にアップデートしていけたらと思います。 

 

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IDBM卒業後、フィンランドでの仕事や生活の様子はツイッターでアップしていきます