皆で創った Living in Finland : Complete Manual
これは今年度のPeriod 2に取ったVisual Narratives in Designという授業での話です。この授業はStorytellingの一つの要素としてビジュアルを様々な形で用いることを総合的に学べる授業でした。この日はZineという個人誌をみんなで作るワークショップがあり、それの記録です。
Zineとは
Magazine の zine (ズィーン)に由来します。自分の趣味や好きなことを好きに書いたり、雑誌を切り貼りしたりする「個人による個人のための雑誌」です。完全自己満足で製作されます。日本でも数年前から密かに流行していたみたいですね。同人誌の文化もあるくらいだから理解され易いかもです。
皆で作り合うZine
さて、この日はこのZineを皆で作るという面白いワークショップがありました。作り方はとても簡単。A3のコピー用紙を8つに折り、真ん中の2部分に切り込みをいれ、8面の冊子ができあがります。
皆で作る
通常はZineは個人の自己満足で自分で作るみたいですが、このワークショップでは皆で作る、という点が強調されました。なんでそんなことをするのか、忘れました。
ルール
ワークショップではいくつかのルールがありました。
- 表紙と1ページ目だけ自分が書き、何も言わずに別の誰かに渡す
- 渡された人は、その内容を汲み取って、続きを1ページ書き足す
- 終わったらまた別の誰かに渡す
- それを冊子が終わるまで繰り返す
- 口頭でのコミュニケーションは禁止
僕が作ったZine
僕のZineのテーマを何にしようかと考え、かねてよりぼんやりかんがえていた「フィンランドでの暮らし」について始めることにしました。このクラスにはフィンランド人、外国人合わせて20人ほどがいたので、良いミックスだったと思います。
タイトルは「Living in Finland : Complete Manual」です。イラストにウサギのキャラを起用してみました。
なんでウサギにしたかは、2019年の夏至近くにVaasaの友人宅に行ったときに見かけたウサギが可愛かったからです。また、このウサギのキャラを次の人が引き継いでくれるか、試してみたかったからです。
1ページ目
1ページ目の出だしは僕が書きました。「バス停で待つ際は十分なスペースを空けて並べ」
これはフィンランドでの有名なあるあるジョークでもあり、ガチでリアルでもあります。フィンランド人はPersonal Spaceがとても大事です。
2ページ目
そして2ページ目は別の誰かが書いてくれました。Silence is golden →「沈黙は金」
フィンランドではあまりベラベラ喋らない文化です。どことなく日本人に通じている所があるようですね。アメリカで行われるようなSmall Talkはかなり毛嫌いされます。
これを書いてくれた人、ちゃんとフィンランドでの生活ルールという内容を汲み取り、イラストもしっかり引き継いでくれ、ウサギファミリーまで書いてくれてました🐰ミッフィーのような口もいいですね。真ん中のウサギがPulla(フィンランド名物シナモンロール)を持ってます。こういう細かなディテールも盛り込んでくれたのが素晴らしい。
3ページ目
3ページ目は Use the zebra when crossing the street →「横断歩道の縞々で渡れ」
確かに、ここの人は割と横断歩道(そしてさらには信号も)ちゃんと守っていますね。イラストのアングルが上からの鳥瞰図なのがナイスです。タイポグラフィも横断歩道の角度に沿ってレイアウトしてくれました。ウサギの耳とヒゲもちゃんとわかります。
4ページ目
4ページ目は Queue everywhere, even if there's no need →「何でもなくても列に並べ」
これもアルアルです。皆ちゃんと並びます、色々。
5ページ目
5ページ目は If there's free buckets on display, you better get one! →「無料のバケツはとりあえずもらっておけ」
これは若干わかりにくいフィンランドジョークで、僕もこれで始めて知りました。以前、フィンランド国内のどこかでスーパーが新規オープンした際に入場者に記念としてバケツを配ったそうです。これが今では半分ジョーク、半分伝統、みたいになっているようで、「新規開店の際はバケツを配る」のが定着(?)したみたいです。
6ページ目
6ページ目は Sauna is Holy →「サウナは神聖」
出ました。もちろんですね。サウナの様子を物理的なサウナを極力書かずしてうまく表現できています。必要最小限でサウナを描写。うまいですね、この人。
裏表紙
そして裏表紙。最後を良い感じにオチができるか、締めくくれるか、がキーとなります。
この人が書いてくれたのは Most Importantly - Be happy! We are the happiest bunnies in the world →「最も重要なのは幸せでいること!我々は世界で一番幸せなウサギ達なのだから」
とてもいい感じに締めくくってくれましたが、実はかなり奥が深いなと思いました。
文字は「幸せでいよう」と書いてありながら、イラストが一人で寂しそうにポツンと座ってるウサギ。顔の表情もそんなに幸せそうには見えません。むしろかなり不機嫌、unhappyにも見えます。皮肉なのか、これはとても的を得ているなと感じました。書いてくれたのはフィンランド人でしょうか。
フィンランドは世界で最も幸福度が高い国の一つ、と言われていますが、現地に住んでみれば、現地の人はそこまでそう思ってないことがわかります。これを書いている今日もフィランドが2020年幸福度が最も高い国1位に選ばれていました。
フィンランド人が実際に幸福かどうかは別途記事を書こうと思いますが、幸福とかいいながらここの国の人は大体ブスッとしてます。決して機嫌が悪いわけではなく、デフォルトとして。少なくとも一般的に思い浮かばれるパラダイスではないことだけは確かに言えると思います。
見事に幸福という外からのプロジェクションと実際の姿の並列を表現して完結してくれました。
まとめ
このZineの共同製作のワークショップ、みんなの冊子の完成度が高く、想像以上に盛り上がりました。正直、僕の冊子も皆ちゃんと書いてくれるとは期待していなかったです。皆それぞれ独特のテーマでZineを始めてたのも見て感心しました。
アウトプットが全く予想できないところも醍醐味です。「喋ってはいけない」など良い意味での混沌が楽しさを倍増させてくれました。いつかワークショップをファシリテーションする際にやってみようかな。アイスブレーカー以上に打ち解けられます。
フィンランドの暮らしのアルアル小冊子、これからも続けてみたいと思います。