アールト大学 IDBM留学日記

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Effectuation Theory を料理で学ぶ

Aalto University IDBMプログラムが本格的に始まって3日が経ちました。僕等の一つ目の授業はIDBM Challengeという3週間のインテンシブプログラムなのですが、3日目の今日はEffectuation Theoryという戦略の思考法を料理(IDBMでは"Cooking Slam"と呼んでた)で学ぶ体験で、それが面白かったので記録しておきたいと思います(IDBM Challengeそのものに関しては別記事にまとめたいと思います)。

Effectuation Theory とは

提唱者であるバージニア大学経営大学院のSaras Sarasvathy氏によるとこの考え方は「今あるリソースでなんとかする」ということだそうです。戦略の思考法には2つのタイプがあり、①Managerial Approachと②Entrepreneurial Approachの2つ。

①のManagerialはまず予算、投資対効果、競合分析等を精緻に分析し、目標を設定してそれに向かって進める大企業型のアプローチ。それに対し②のEntrepreneurialは予算もなく、未知の領域を開拓するのであまり目標がハッキリしない起業家型のアプローチ。この起業家型のアプローチをEffectuation Theoryと呼びます。

IDBMの講師の方がわかりやすく説明してくれました:

  • Managerial Approachは「手法と材料がきっちり書かれたレシピで料理することよ」
  • Entrepreneurial Approachは「冷蔵庫に入っているものを使って料理することよ」

なるほど。 

Effectuation Theory を料理で学ぶ?

というわけでこのEffectuation Theoryを身を以て学ぶため、我々IDBM生はヘルシンキにある貸しキッチン/イベントスペースのFlavour Studioに集結しました。待ち受けていたのは、いくつかのテーブルに置かれた食材。それも限られたもののみ。

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お題は、「テーブルの上に乗っかっている食材のみで食事を作る」というもの。料理のバラエティ番組のようです。

各テーブル毎に作る食事の種類が違い、僕が参加したテーブルは「前菜」の担当でした。置かれていた食材は:長ネギ、リンゴ、玉ねぎ、チーズ、バター、ザクロ、等。

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エキストラテーブルに色々他の食材もあり、そちらも使ってよいとのことで、ピーマンとプリングルスもゲット。テーブルの上に置かれた食材は全て使わなければいけない制約があり、味が複雑になりすぎないように配慮が必要でした。

Effectuation Theoryに基づいて作戦会議

幸いにもチーム内に料理に詳しい女性メンバーが数人いたので、テーブル上の食材を使ってどういった料理が作れるか、サクサク議論が始まりました。玉ねぎと長ネギをバターで炒め、それを半切りピーマンの上に乗せ、ザクロの実で飾るといった構想ができあがりました。与えられた時間は1時間ほどのみ。モタモタしていられません。すぐに全員で作業にとりかかりました。

料理のピボット 

ところが作り始めてすぐに運営から「あー、ごめん。ちなみに全員分(約50名分)の量を作らないといけないよ!」とのツッコミがあり「半分に切ったピーマンの中に具をいれる」といった当初のアイデアは圧倒的に数が足りなくなることに気づき、いきなりピボット(方向転換)を実施。人数分が十分に確保できそうなプリングルスに乗せることにしました。

完成

「作りながら検証する」という素晴らしくアジャイルな手法で料理が進み、完成した僕等の前菜はこちら:

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 味も悪くありませんでした。 緑色のものはリンゴの摩り下ろしに青色着色料を混ぜたもの。テーブル上の食材を全て使うため、2種類のバリエーションを作って乗り切りました。 

他のチームは「メイン」や「デザート」などのお題があり、それぞれちゃんと制限時間内に50人分の料理を準備できていたことが何よりの驚きでした。全部のチームの料理を試食することもでき、どれも美味しかったです。

  • その場にあるリソースのみを使う→工夫する
  • 限られた時間内に行う
  • やりながら考え、うまくいきそうになかったらすぐにピボットする
  • チームワーク最優先で結束して遂行する

以上のことが全て行え、Effectuation Theory を体感できるCooking Slamだったと思います。

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まとめ

Effectuation Theoryをチーム料理で体験できたのはとても有意義であり何よりも「fun」でありました。

Managerial か Entrepreneurial、どちらのアプローチが良いかというものではなく、時と場合によって手法が異なります。

Managerialアプローチの目標設定がなければ測定が不可能ですし、Entrepreneurialアプローチのアジャイルさがなければテストのスピードや予想していなかった「ひらめき」との出会いも少なくなりそうです。

両方の考え方をバランス良く取り入れて物事を進めることが大事なのだと学べた1日でした。