アールト大学 IDBM留学日記

デザイン × ビジネス × テクノロジー

デザインで未来を創造する - Design Driven Foresight

先のピリオドではDesign Driven Foresightという授業をとっていたのですが、アールト大学で受けたベスト授業トップ3に入ると感じたので、その記録を何回かにわけて残しておきたいと思います。

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どういう授業なの?

簡単にいうと未来について考察するという授業です。

授業のカテゴリーはファッション分野に割り当てられていますが、もっと幅の広い未来がテーマです。アールト大学デザインスクールの名物教授、Heidi Paavilainen教授が教鞭をとるこの授業は毎回が本当に楽しく、10ECTSの割と過酷なワークロードすらエンジョイできるくらいのものでした。活発なインクラスディスカッション、質の良いゲストレクチャー、自由度の高いファイナルプロジェクト(トレンドレポート)など、個人的に学びも多く、非常に満足度が高い授業でした。Paavilainen教授もクラスのディスカッションをファシリテートするのが上手く、議論が毎回白熱したのもポイントです。アールト大学に来られる方でもし機会があれば是非オススメしたい授業です。Electiveなのでどなたでも受講できます。

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まずは1週目でカバーしたことをまとめてみましょう。

未来はパターンを繰り返す

未来について考察するとき、重要な要素としてパターンの繰り返しがあります。このパターンとは何を指すのでしょうか?それを構成している要素は何なのでしょうか?
異なる2つの考えを見てみましょう。

 

①トリクルダウン・アップ・クロス

ドイツの社会学ゲオルク・ジンメルによると、ファッションが変化する理由は消費者は、帰属すると同時に差別化を望むからだそうです。我々はグループの一人として所属していたいが、その中で独自のスタイルを発信したいのです。それを説明するためトリクルダウンというメカニズムがあります。上流階級は下位階級との差別化のため、消費するものを変更します。これは下位階級が簡単にできないことです。しかし、下位階級は社会的により高い存在だと見られたいので、高い階級の消費や行動を模倣します。これにより、上流階級はさらに新しい方法と消費するものを探します。モノ・コトの影響が社会のヒエラルキー(階級・階層)を上から下に下がるのがトリクルダウンです。

現代ではこのモデルはさらに複雑になります。逆のパターン、下から上へのトリクルアップ、さらには同じ階級間のトリクルクロスという流れが乱雑に交錯します。実際、1960年以来、トリクルアップがファッション業界を支配してきました。ストリートファッションがむしろクールだと見られる風潮がそれです。

 

Zeitgeist時代精神

アメリカの社会心理学者ハーバート・ブルーマーはジンメルと反対のことを主張します。ツァイトガイスト時代精神)の考えにのっとり、どんな時でも人は同じテイストを持つ、と主張します。彼が1960年代にパリで行なった研究では、他の人が何を買っているのかわからない人達でも、何百もの似たデザインの中から同じデザインを購入していたそうです。ファッションがこの様に機能する理由は、消費者が次のファッションとして発表されるものすべてを購入しないからだと指摘しています。ファッションのミステリーとは、いつ、どんな時代においても消費者の嗜好が同じ方向に向かういうことです。

このメカニズムはファッションのみに限定されません。消費者として、私たちは似たような話題、色、デザインを好む傾向があります。いつどの時代においても、特定の分野に資金が提供され、特定の色が売れ、特定の場所が人々を引き付け、特定の製品だけが販売記録を破る"メガヒット"となるのです。彼はベストセラーと言われるものは、消費者にとって「その時の今-ツァイトガイスト時代精神)」を最もよく反映するものであると指摘しています。

 

統合すると大きな流れになる

ジンメルもブルーマーもどちらが正しい、というものではなく、こういうメカニズムで消費が行われるということを汲み取れます。階級間の影響も、消費者の時代精神も、未来に向かっていく大きな流れのようなイメージです。実際、未来というコンテキストにおくと、流行りとは未来を一部、既に体現しているものだということがわかります。

クラスのディスカッションでは、現在どのような時代精神があるかが議論されました。フィンランドの文脈が強かったのですが、ベジタリアン(アンチミート)や、消費しないミニマリズム(Konmariが流行る理由もこれ)、瞑想やヨガ(アプリが蔓延)、などが時代精神を表しているコトとして話し合われました。全てが時代精神にのっとっているとしたら「完全オリジナル」になることなど可能なのか?という議論も面白かったですね。

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ゲストレクチャー : Virpi Vaittinen

始めの週のゲストレクチャーはデザインコンサル会社NordkappのVirpi Vaittinen氏が行なってくれました。最近は顧客から「未来シナリオを作ってくれ」というデザインワークの相談が増えてきたそうで、共に未来をスペキュレイトした事例をいくつも紹介してくれました。「これはスペキュラティブデザインですか?」という質問に対し「私はその言葉に対してアレルギー反応がある。顧客に価値を提供するだけだ」と言っていたのが印象的です。デザイン思考同様、バズワードが本質を先走ってしまうことを懸念されていたようです。

 

まとめ

未来はパターンは繰り返す、というのが大元にあり、そのメカニズムを理解するために異なる2つの考えを参考にしました。複雑な現代においては影響というものは大きな流れのようなものであり、その流れのメカニズムを理解すると未来も自然と見えるようになる、というのが1週目のレッスンでした。今流行りのものを一つとっても、未来という軸におくと違った見方ができるでしょう。