アールト大学 IDBM留学日記

デザイン × ビジネス × テクノロジー

アールト大学IDBM1年目を振り返って

昨日、Design Researchという授業が終わり、アールト大学IDBMでのYear 1が正式に終了しました。長かったようであっという間にすぎた9ヶ月。これを機会に一度立ち止まり、1年目を振り返ってみたいと思います。

IDBM

ヘルシンキ市役所のロビーで存在感を放つ、市のブランディングの立体表現。かっこいいですね。

学んだと思えること

● ハードスキルが少し増えた

当初目的としていたビジネスの授業をelectiveとして多く受講できたので、いわゆる単純知識が増えた。デザイン活動に生かすための引き出しとしても蓄積ができたのは正直にポジティブな結果です。2年目さらに多くのelectiveが取れます。

● ソフトスキルが少し増えた

元来プロジェクトにおいて人に任せるのが下手な体質の僕は、なんでも自分でやりがち。しかしIndustry Projectでは人に任せるべきものは任せ、自分ができるものは自分がやるということを心がけました。聡明で機知に富んだチームメイトがいたのも助かりました。多国籍、異分野間で行うプロジェクトでチームの結束を高める活動もできたのは良かったと思います。

● 視点が広がった

嫌でもこれは行われます。様々な人と交じり合うなかで生活し学べたので、意識せずとも視点が増えたことが自分の中でもはっきりとわかりました。何か一つの事象を脳内にインプットした瞬間、複数台のカメラがぐるっとそれを取り囲むイメージです。取り入れた情報を自分が1次元的にしか見ていないか、注意するようになったと思います。これはさらに継続的にやっていく必要があります。

● コンフォートゾーンから踏み出す姿勢が強まった

ヘルシンキのSörnainenから徒歩15分ほどの所にSompa Saunaという公共サウナがあります。管理はボランティアのみんなで行われて、誰でも無料で使える、とても素敵なサウナです。海のすぐ横にあるのですが、3月のまだ氷が海上を漂う中、友人2人とこのSompa Sauna にいきました。サウナで十分に温まった後、氷の張った海の中に飛び込むというのをついに僕もやりました。現地の人は「これは健康に良い」と言っているのですが、僕からしたら「なんでこんなことするの?」。。まさしく物理的にコンフォートゾーンから踏み出すことを体現。ちなみに上半身は割と平気だったのですが、足のつま先が本当に凍てつき、それが耐えられずに5秒で這い上がりました。隣で平然と泳いでいたフィンランド人とはやはり体の作りが違うのでした。

サステナビリティへの意識

どこにいってもサステナビリティに対する関心の高さには驚きました。日本語で「もったいない」という独特の表現があるように、フィンランドでも物を大切に扱い、無駄を省く努力が行われていることに驚きました。学校に在籍しているからかもしれませんが、サステナビリティに関する意識はむしろ日本より高いかもしれないと感じました。サステナビリティが環境への配慮だけに止まらず、新たなビジネスチャンスとして特に欧州で注目を浴びているのが実感できるほど、サステナビリティ関連の会社やビジネスと触れ合うことができたのは大きな収穫でした。

IDBM

タンペレ市の小高い丘の上から

IDBMのプログラムについての感想

結論から言うと、アールト大学のIDBMはプログラムとしてはまだ発展途上だと実感しました。切り口は素晴らしく、タイムリーな教育指針であることには間違いないと確信していますが、それぞれ授業の構成とその結び方に大きな改善余地があることも否めません。ちなみに「今年の」1年目のIDBM全員の必須授業構成は以下の形です。(デザインの学院生はまた別途必須がいくつかあり)

  • IDBM Challenge(領域横断の混沌へのウェルカム)
  • Corporate Entrepreneurship and Design(デザイン枠)
  • Business Model Design(ビジネス枠)
  • Networked Partnering and Product Innovation(テクノロジー枠)
  • Industry Project (領域横断でリアルプロジェクトに立ち向かう) 
  • Capstone Global Virtual Teamwork

ツッコミどころとして、それぞれの授業がお互いに補完し合うように設計はされていないので、接点を見いだすのは個人の力量に問われます。(点と点を結び意味を見いだすのは自分でやるしかない。)学部から直で上がってくる人にとっては少しゼネラリストすぎかなという感じです。 

以下、その他の感想:

  • 今年のIDBM生は若めの人が多かった(学部から直で上がって来る人もたくさん)
  • 今年は女性が多かった(Industry Projectの全10チーム中、8チームは男性1人)

アールト大学も、IDBMも、常に変化し続けていることが前提としての感想でした。毎年毎年、丁寧にフィードバックを受け付け、改善していこうとする姿勢は本当に良いです。そしてIDBMはプログラムとしては発展途上であるものの、良い部分は数えきれないほどあります。electiveでは幅広い授業の選択肢が受講できますし、IDBM以外でも関わることができる面白いモノ/コトがたくさんあります。今年の授業構成が来年続くとも限りませんし、むしろ去年より全然良い!という声も聞こえていました。また、トンカチを持てば何でも釘に見える、と同じく、自分自身でしっかり学ぶ姿勢を持っていれば学ぶことはいくらでもあることは事実です。

IDBM

タンペレ市のムーミン美術館のムーミン像。サイズがドンピシャにかわいい。

修士論文に向けて

さて、2年目の大きなプロジェクトとしてMaster's Thesis(修士論文)があります。Industry Projectではプログラムのスケジュールもあり、クライアントの都合もあり、チームで課題に挑む、というコンテクストがありましたが、修論は自分で決めて自分で推し進めるもの。個人でコントロールできる要素がかなり大きいです。IDBMを2年間という枠組みで俯瞰すると、1年目ではIndustry Project、2年目では修論、というナイスなコンビネーションなのではないでしょうか。

デザインの学院生全員に向けたDesign Researchの授業では最終日、修論に向けての説明会(Thesis Seminar Kickoff)が行われました。修論って何?から始まり、その進め方などについて念入りに説明を受けました。特にこの夏季休暇中にやっておくべき課題も提示されました。

  1.  a) Develop your topic OR b) List relevant literature
  2. Write 100 Theses
  3. Study Department’s MA theses
  4. Learn the requirements

まだ研究したいテーマが決まっていない人(はい私です)は、修論のテーマのタイトルを100個リストアップしろ、3週間日記をつけて興味エリアを深く観察しろ、興味だけで収まるのか修論として研究するに値するものなのかを分析しろ、などいくつかの課題をこなす命令が下されました。

5月中に修士論文の発表もいくつか見たのですが、うまくできているなと思ったものと、本当に修論として完成しているの?と疑問に思ったものの差がすごく、かなりの焦燥感を感じました。夏は修論に向けての冒険の始まりです。