アールト大学 IDBM留学日記

デザイン × ビジネス × テクノロジー

Business Model Innovation

今週の主題はBusiness Model Innovation (=ビジネスモデルの革新)に関するものでした。目的はビジネスモデルの変革とそれに必要なものを理解し、独創的な例を特定して自ら設計を可能にするようになることでした。そこまでできるかは別とし、このモジュールも「デザイン × ビジネス × エンジニアリング」を追求するデザイナーには有益だったので記録しておきたいと思います。

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(画像:この時期に行ったコペンハーゲンにて)

Business Model Innovationとは

Open Innovation 等の著者である Henry Chesbroughは、ビジネスモデルの革新が何であるか、そしてそれを達成するためには何が必要であるかを説明しています。彼はビジネスモデルには6つのパラメータがあり、それぞれが革新が起こる可能性を保有する分野であることを指摘しています:

  1. Value Propostion(価値提案)
  2. Target Market(ターゲット市場)
  3. Value Chain(バリューチェーン
  4. Revenue Mechanism(収益構造)
  5. Value Network(バリューネットワーク)
  6. Competitive Strategy(競争戦略)

ビジネスモデルの革新という観点では、企業にはそれぞれ「ステージ」が存在し、最下位のステージには差別化ができていない状態が存在し、最上位のステージには適応可能なプラットフォームを持っている状態が存在すると、彼は主張しています。この最上位ステージでは主要サプライヤーと顧客はビジネスパートナーとなり、技術的リスクとビジネスリスクの両方を共有することができる状態になります。これは、前週の学習テーマであったプラットフォームビジネスモデルに近い形ですね。

Business Model Innovation のチャレンジ

Chesbroughの教えから学べる重要なポイントは、企業がビジネスモデルを改善することは非常に困難であるということです。ほとんどの一般的なマネージャーは既存のビジネスモデルに執着し、そのモデルの制約内でビジネスを成長させることに集中する、と彼は言っています。変革に必要なのは3つ:企業のトップレイヤーの関与と、既存のビジネスとの競合を防ぐための実験的と、それを組織内部で保護し邁進する努力、です。

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(画像:この時期に行ったコペンハーゲンにて)

Raphael Amit と Christoph Zottの2人は、ビジネスモデルの革新の重要性についてChesbroughと同様の視点を持っていますが、異なる手法を用いて論じています。ビジネスモデルの成功事例してiPhone + iTunesのエコシステムを見てみましょう。ソフトウェアの直感的な操作性や端末のデザインの美しさ、曲を購入してプレイするエンジニアリングの仕組みの簡単さもさることながら、そのビジネスモデルの鋭さに目が行くはず。サービスや製品そのものではなくより大きな価値を創造し循環する仕組みがビジネスモデルの革新であることがわかります。逆にHTCの販売する端末にはそれが欠けています。HTCのビジネスモデルでは、最先端のスマートフォンタブレットの販売によってのみ利益を得ることができますが、それらを使ってさらなる利益を得て、循環することはできません。

Amit と Zottは新しいビジネスモデルを立ち上げる方法についての深い洞察と具体的な手順を示してくれています。「革新を具現化するにはまず木ではなく森を見ろ。詳細を最適化する前に全体的なデザインをしろ」という非常に綺麗なフレーズで結論づけられています。これは言う方が圧倒的に簡単です。

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(画像:この時期に行ったコペンハーゲンにて)

実際に企業では「内部政治」が必ず起きると思っています。そしてこれがビジネスモデル革新を阻害する障壁となります。マネージャーは、現在のビジネスモデルを維持することを主張し、それに反対する革新勢力に権限がない場合などが想像できます。多くの場合、人々は単に疲れてしまいそこで革新が止まってしまいます。これは上下関係を尊重する日本の会社ではより顕著に現れるのではないかと考えます。日本の企業でビジネスモデルの革新(変化の部分)が何らかの形で成功した場合、一部の人々が内部的に本当に良い仕事をしたんだと考えてしまいますね。 

フィンランドのS Group は Business Model Innovation の事例

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(画像:この時期に行われたIDBMのクリスマスパーティー会場の様子)

ビジネスモデルのコンテキストにおける実際の革新を発見するという点で、より大きな学習があったのが木曜日のワークショップでした。5人ほどの僕達のチームはフィンランドの大企業であるS Groupについて調べてみました。S Groupは複数のブランドを傘下に持つ単なる統合体のことだと思ってましたが、間違っていました。S Groupは会員となる顧客が会社の所有者になるCo-op System (=生活協同システム)を採用しています。調査を進め、S Group のコープシステムが実は効果のあるビジネスモデルなのではないかとも思えてきました。S Groupはビジネスを彼等のエコシステム(スーパーマーケット、ホテル、銀行、サービス)内の複数の方向に流し続けるために、分数型所有権、顧客ロイヤリティおよびロックインモデルを適用していることがわかりました。例えば、傘下のスーパーであるS Marketで商品を購入することで、S Group 内のさまざまなサービスに利用できます。これ自体はかなり簡単な仕組みです - 楽天とAlibabaも同じロジックを持っていますが、消費者は企業を所有していません。これは、S Group がどのように異なるかのコアとなっています。顧客がビジネス自体に含めることにより、バリューネットワークとエコシステムを強力なものに革新します。

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(画像:この時期に行われたクラスメートのコンサート-石の教会にて)

S Group の仕組みは労働者の共同所有によく似ています。19世紀に食料品が少なく、物資も少ない状態から生み出された協同組合のシステムでは、商品を共同購入して所有者に配布することで人々はより密接なコミュニティを作り、より長く生き残ることができました。本質的に、S Group はこのシステムを維持し現代のビジネスモデルのコンテキストに応用しているとも言えます。そしてこれは真似が難しい革新的なビジネスモデルなのではないでしょうか。もし顧客がビジネスの一部を所有している場合、他の店舗から購入することはほぼあり得ないと思います。 

結論として、S Groupの革新的なビジネスモデルには大きな学習がありました。Co-opと(コープ)いう言葉は日本では野菜の宅配等、地域に根ざした形のビジネスのイメージがありました。社会主義的な背景があり、それを現在のビジネスモデルに応用できた例を知れたのは新しかったですが、コープシステムのさらに深い研究が必要だとも感じました。