Business Model Design : プラットフォームビジネス
デザイナー出身の僕が「デザインとビジネス」というテーマを追求するにあたって、今のところ一番学びのある授業がこの Business Model Design という授業でした。はじめての体系的な「ビジネス側」の授業になるので、授業内外での時間をかなり有効的に活用できました。経営やビジネスを学んできた人にとっては既知の内容がほとんどですが、デザイナーがビジネスを学ぶ切り口としてはとてもわかりやすく(難しすぎず簡単すぎず)何よりも面白い内容に仕立てられていると思います。デザイン出身でIDBMに留学される方にはオススメできる授業です。
Business Model Design の授業概要
この授業の目的は1つ:「ビジネスモデルとは何なのかを理解し、既存のビジネスを客観的に分析でき、最終的には自分でも新しいビジネスモデルを創造できるようになること」になります。教授が機知に富んでいるのと、シラバスがしっかり組まれているので、学習効率が高いです。読み物とレクチャーから学んだことをレポートにまとめるLearning Diaryも毎週提出が求められますが、学んだことを文章にまとめるという作業は頭の整理にものすごく役に立つので、いいアプローチですね。ポイントは読んだことを単にまとめるのではなく、自分の中で消化してオリジナリティある思考をはきだすことです。
授業のモジュール
授業のモジュールは以下の通り:
1週目:Business model as a concept
2週目:Value creation and capture through business model design
3週目:Platform Business Models
4週目:Business Model Innovation
5週目:Trending topics in the domain – the state-of-the art in business ecosystems and service business
6週目:なし。「Slushに参加しろ!」
プラットフォームビジネス
1週目のBusiness model as a concept、と、2週目のCustomer Value Propositionはまあ普通に社会人やって学べたことなので記事としては割愛。まず個人的に面白かった3週目のPlatform Business Modelsについて書きます。濃い内容だったので若干長めの記事になりました。
プラットフォームビジネスとは
プラットフォームビジネスとは何なのか、からまず入ります。その言葉を聞いて思い浮かぶのはUberやAirbnb、iOSやGoogle Playといった「提供する側と使う側を繋ぎ合わせる土台」です。従来のビジネスモデルと比べるとその違いがはっきりします。上流から下流に向かって生産活動が起こり、一方通行的に消費者の手に価値が渡るのがtraditional business。それに対しプラットフォームモデルではtraditional型のカスタマーバリューへのフォーカスに加え、エコシステムバリューへの配慮も求められます。ユーザーがその土台を使ってちゃんと求めるものに出会えるのか?といったような課題への対処です。最近はプラットフォーム型のビジネスをデザインする方向に世界がシフトしつつあるようです。
プラットフォームに存在する4つのカテゴリー
プラットフォーム型ビジネスでも大きく4つにサブカテゴリーが存在します:
- Modular technology platforms
- Supply chain integration systems
- Multi-sided markets
- Technology ecosystems
1番のModular technology platformsは例えば自動車の部品を共通化するようなもの(多くの自動車メーカーが採用)で、2番のSupply chain integration systemsは生産から流通までを最適化・共通化するもの(Walmartの例が良いケースです)です。これらは今までにもさんざん実施されてきていたことですね。近年のデジタルのおけるプラットフォームビジネスは主に3番と4番のモデルです。UberやAirbnbは3番のMulti-sided marketsになり、iOSやAndroidは4番のTech ecosystemに入ります。
プラットフォームビジネスが持つ3つのバリュー
上記の4つのプラットフォームのどれを切り取っても、以下の3つのバリューが提供されていることがわかります:
- Community
- Technology Infrastructure
- Data
Communityはそのプラットフォームに関わるユーザー自身が相互に交流できる「場所」のこと。facebookはユーザーが思いを発信し、繋がりを作る場所です。
Technology Infrastructureは文字通り技術的な基盤。Youtubeはユーザーがビデオをアップする技術基盤を提供します。
Dataはユーザーがそのプラットフォーム上に存在する情報によって得られる利益の元。ユーザーやコンテンツがデータによって利益を享受できる仕組みがプラットフォームに存在します。
どんなサービスも上記のバリューを複数もつことが可能で、多ければそれだけ多くの価値を提供でき、多くのユーザーを長く巻き込むことができることを意味します。FAANG系のプラットフォーマー企業は全て揃ってるのがわかります。
プラットフォームビジネスを支える3つのロジック
理論的には全てがうまくいきそうなプラットフォーム型のビジネスですが、これが機能するには以下の3つの要素がないと成り立ちません:
- Connecting Actors
- Sharing Resources
- Integrating Systems
Connecting Actorsは、文字通り、Actor(ユーザー)自身がプラットフォームのノードとなり、お互いに連携し合うことを指します。LinkedinやTinderがこれの代表です。
Sharing ResourcesはAirbnbやBitcoinのように、ある一定のリスクをリワード制度によって担保する仕組みです。Airbnbでは「見知らぬ他人」を泊めたりするのにコミュニティからのその人の評判が大事になります。
Integrating SystemsはクレジットカードやUberのようにトランザクションコストを最適化するものです。
プラットフォーム型の最近のトレンド
2,3年前まではこのプラットフォーム型はかなり熱く語られていましたが、最近は冷めた視線も多いです。Y Combinatorという米国の企業塾において、およそ3割の会社が「プラットフォームを作る..」と言っているそうです。メンターのPaul Grahamはこれに対し、プラットフォームという言葉を使わずにできそうかどうか考えよう、と提唱しています。
プラットフォームは進化し続ける組織である、という見方
講義で使用したテキストの一つにAnnabelle Gawerという人の記事がありました。かなりアカデミックな論文ですが、プラットフォームビジネスを「進化し続ける組織」であるという見方をしているところに個人的な発見がありました。要点をまとめると以下のような感じになります。
プラットフォームビジネスは経済的な側面と技術的な側面の2つが存在する。がしかし、プラットフォームを組織的な観点から分析すると面白い光景が浮かび上がる。一般的にユーザーはコンテンツを消費する立場だと思われるが、同時にプラットフォームにコンテンツを提供する「提供するサイド」としてもとても重要な役割を果たす。GoogleやFacebookではユーザーはとっても重要なコンテンツ提供者である。時にユーザーは、プラットフォーム自体の供給(およびそれ以上の革新)に(一般的には未払いの)貢献者の役割を果たす。
彼女のポイントは、この時代においては誰もがサプライヤーと消費者の両方の役割を果たし、さらにその役割の組み合わせ自体も急速に変化し続けるというところにあります。このセオリーは、しばしば、イノベーションを生み出すのはユーザーであり、プロバイダーではないことであるという分析もできます(僕が前職で提供していた法人向けモバイルクラウドもユーザー企業側に使い方を委ねていたのを思い出しました)。Twitterもこれの良い事例になります。日本人が金曜ロードショーのバルス祭で熱狂してサーバー落とすことを当初、誰が想像していたでしょうか。もちろん観察を重ねてエコシステムは強化されていきましたが、最終的に行動を起こすのは個々のユーザーに任されているわけですね。そしてそれはものすごい勢いで姿を役割を変えます。そのため、プラットフォームは進化する組織と見なすことができるのです。
まとめ
- プラットフォーム型ビジネスには4つのカテゴリーが存在する
- そして3つの価値がある
- プラットフォームを支えるのは3つのロジック
- 進化し続ける組織という見方ができる