DASH Design Processに参加
先週の木曜日、DASH Design Processというイベントに参加しました。(*DASH は例のデザインハッカソンのイベントを開催している組織です)
「デザインプロセス」と言っても業界もサービス領域も違うヨーロッパの3社のデザインの考え方について学べる機会です。面白そうだったので行きました。以下の企業担当者の講演に加え、woltというフードデリバリーアプリの方達からのワークショップにも参加することができました。
- Smartly.io(広告配信プラットフォーム)
- Pentagon Design(ブランディング)
- iittala(老舗陶器メーカー)
- wolt(フードデリバリーアプリ)
かなり殴り書きでメモっていたのですが要点はこんな感じです:
Smartly.io
講演担当:Roman Musatkin氏
この会社はSmartlyというオンライン型広告配信最適化+自動化のサービスです。大体のITベンチャーに多い「エンジニア」+「デザイナー」+「マーケター」が社内に存在する組織形態。
- デザインプロセスの根底にあるのは「開発スピードを最速化すること」
- 顧客の広告の多くはフェイスブック上で展開される
- フェイスブックは年間100+の機能追加(もしくは変更)を行うので常にup-to-dateの状態にしておく
- 1日10〜20のコードをデプロイする
- カスタマーサクセスはエンジニアもデザイナーも全ての従業員で行う
- デザインプロセスには全ての人が関わる
ビルドの仕方
- いきなり大きな機能はできない(その時間もない)→もっとも製品価値を高める最小の単位で機能開発+追加を行っていく
- Plan, Design, Release を1週間内で行うこともしばしば
バックグラウンドリサーチの仕方
- カスタマーサクセスで集めたノウハウ
- Account Managers (担当営業)が持ち帰ってきたフィードバック
- フィードバックが常に共有されるフロー
- 全てJira(Atlassian社の)に集約
ラピッドプロトタイピングの仕方
- ホワイトボードに1,2日かける
- その後全てSketchにて行う
デザインシステム
- もともとデザイナーがいない状態でスタートした会社なので、統一感あるUIを出すためにSketch上でまとめておいたのが幸いした
- 現在もデザイナーはSketch上で新たなブランチを切って新しいスタイルを追加する
- コンポーネントを使い回すことで都度エンジニアがスタイリングで頭を悩ませる必要がなくなる
- buttonやinput要素など、全てのパーツで同じネーミングストラクチャーを使うのでスムーズ
テストの仕方
- 社内で行う
- 定期的に顧客ヒアリング
- Demo Friday - 金曜日にエンジニアが社内披露し、フィードバックを得る
Feature Gate
- 限られた顧客のための機能解放
- 全ての顧客がいきなりの機能変更にビビらずに済む
感想:
特に大きなサプライズはなく「IT系の事業会社にいればそうだよね」というような内容でした。ここでも日本と同じようなデザイン&開発プロセスがあることに少しホッとしました。ただ、ヨーロッパの文化的に機能やUI変更も、既存の顧客層に臆せずガシガシやってそうなところは羨ましくもすごいと感じました。
Pentagon Design
講演担当:Virva Haltsonen氏
主にブランディングを手がけるスペシャリストの会社。講演担当のVirvaはAaltoのIDBMの卒業生でした。
紹介してくれたケーススタディは、Fazer Lakritsi というお菓子のパッケージのブランディング事例。デザインプロセスにはDouble Diamond Method(日本では聞いたことがありませんでした。。)というアプローチを使って行うとのこと。
Pentagon Designのブランディング案件ではwebサービス等と同様に理解→調査→プロト→テスト→納品 というプロセスがあることがわかりました。
iittala
講演担当:Jeremiah Tesolin氏
iittalaは日本にもファンが多い陶器の老舗メーカーです。デザインプロセス、という今回のテーマとはちょっと違い、 How to Build a Company という内容をシェアしてくれました。
Tesolin氏によるとiittalaのような会社にとって How to Build a Company ということは、Making the Company Relevant ということ = 人々の生活や文化に対して「関係性のある会社」にしなければならないとのこと。IT系の会社では、製品はテクノロジーの影に"隠れる"ことができるが、iittalaのマグカップの様な基本的なオブジェクトを製造する会社はテクノロジーの影に隠れることはできません。
企業と人、という観点で見た場合、iittalaでは「花瓶」というオブジェクトはただの花瓶ではなく、「花というjoy」を人々の生活にもちこむ、とうことになります。「食器」もただ食材を載せるものではなく、「食事をエンジョイする価値」を届けるもの、という捉え方になります。
また、変化のスピードが激しいこの時代だからこそ、iittalaのような「昔からの名門」メーカーも対応していかなければならない、というポイントも強調していました。
ただそれは企業としての強みをいきなり全シフトするのではなく、「一番強い分野」を活かしつつ時代へ対応していくという考えのようです。
面白かった事例として、Industry Hackというイベントの例がありました。iittalaの製品とIoTの可能性を探るハッカソンイベントです。ガラスに問題があるかというiittala側の予想に反し、エンジニア達はガラスの使い方に注目したとのこと。タップに反応するランプや、ツイートするiittala、家の中に誰がいるかを示してくれるデバイス等、クリエイティブなアイデアがたくさん出たそうです。
今までの高級陶器のメーカーから人々の生活に寄り添う先進企業、へのシームレスな進化にさらに注目が集まりそうです。
wolt のデザインプロセスワークショップ
3名の講演とQ&Aが終わったあと、woltによるデザインプロセスのワークショップがありました。
写真:(左)共同創業者兼デザイナーのMika Matikainen氏、(右)リードデザイナーのAnnu-Maaria Nivala氏
woltはUber Eatsと似ているアプリで、レストランからのデリバリーだけでなく、ピックアップも指定できます。僕もたまに使っていますが、細かなアニメーションやユーザビリティの高さが気にいっています。
今回のワークショップでは、
- ランダムに分けられたチーム毎に別々のペルソナを与えられる
- そのペルソナを分析する
- そのペルソナに合った機能をブレストしてスケッチしてみよう!
という内容でした。
ワークショップに参加していたメンバーは25人ほどでバックグラウンドも年齢もかなりバラバラ。僕のチームが与えられたペルソナは「10歳の女の子」でした。なんと僕の一番の苦手エリア。
チームのメンバーが女の子ウケしそうなかわいいイラストや、子供が楽しめそうな待ち時間中のゲームの発想がポンポンでてきたのですが、もちろん全部女性メンバーからのアイデア。対して僕の紙は"男性的、普遍的"と思われかねないスケッチばかり。。
「自分と全く違う人間にどうやってEmpathyするの?」という問いは今回の留学の副テーマかもしれません。
一通りスケッチが終わったあと、それぞれのチームが発表。UIデザイナーからしたら現実味がある具体的なUI案はなかったと思いますが、逆にそれが新鮮でもありました。ワークショップを開催し、普段UIデザインとは無関係な人達からの意見を見ることは、固定概念化しがちな自分の頭を柔らかくするのはとてもいい手段だと実感できました。
以上、DASH Design Process のレポートでした。